身体の裡にあったもの

 心の中では、何かが燃えているような気がする。それは魂なのかもしれないし、そうでないのかもしれない。それは赤く燃えているのかもしれないし、青や緑、黄色や紫みたいな色彩豊かな燃え方をしているのかもしれない。大きく、激しく、ぱちぱちと燃えているものもあれば、音を立てずに静かに、小さく燃えているものもあるかもしれない。とはいえ、人それぞれにその人なりの炎があり、それを糧にして、日々の生活を送っているように私には思える。

 

 この頃、私の中にあった炎がフッと消え去ってしまったような気がする。つまり、中心に糧がなく、身体の真ん中に大きな空洞が、底の到底見えないような深い闇が存在している。

 

 それは徐々に私の身体と精神を蝕んでいく。喉を押さえつけて呼吸を難しくする。内臓にものを入れまいとして吐き気を催させる。脳の表面に近いところ、側頭骨のすぐ下の辺りを寄生虫がギュルギュルと這いずっている。誰かが耳のすぐ横でしきりに何かを囁き続ける。

 

 私の意思に関係なく、カミのような存在からの命令で、強制的に自信の客体化が行われている。自分自信が果てしなく遠く感じる。つい最近まで私自身であり、一体となっていた私の身体は今となっては手すら届かないほどに遠くに去ってしまった。

 

 まるで海を眺めているようだ。海は渚を行ったり来たりしながら唄をうたう。それはどこか心臓の拍動に似ている。私たちは海より生まれたのだ。そして死んだら海に還る。海は生物の源である。

 

 海は絶対的孤独の象徴である。同時に、永続的絶望そのものでもある。

 

 海とは死である。

 

 私も海に還ろうとしているのだろうか。